年間第三十四水曜日(11/26)

祈る花:Inoruhana

忍耐によって、あなたがたは命をかち取りなさい 🌸 第一朗読 (ダニエル5.1-6、13-14、16-17、23-28) ダニエルの預言  1ベルシャツァル王は千人の貴族を招いて大宴会を開き、みんなで酒を飲んでいた。 2宴も進んだころ、ベルシャツァルは、その父ネブカドネツァルがエルサレムの神殿から奪って来た金銀の祭具を持って来るように命じた。王や貴族、後宮の女たちがそれで酒を飲もうというのである。 3そこで、エルサレムの神殿から奪って来た金銀の祭具が運び込まれ、王や貴族、後宮の女たちがそれで酒を飲み始めた。 4こうして酒を飲みながら、彼らは金や銀、青銅、鉄、木や石などで造った神々をほめたたえた。5その時、人の手の指が現れて、ともし火に照らされている王宮の白い壁に文字を書き始めた。王は書き進むその手先を見た。 6王は恐怖にかられて顔色が変わり、腰が抜け、膝が震えた。13そこで、ダニエルが王の前に召し出された。王は彼に言った。「父王がユダから捕らえ帰ったユダヤ人の捕囚の一人、ダニエルというのはお前か。 14聞くところによると、お前は神々の霊を宿していて、すばらしい才能と特別な知恵を持っているそうだ。16お前はいろいろと解釈をしたり難問を解いたりする力を持つと聞いた。もしこの文字を読み、その意味を説明してくれたなら、お前に紫の衣を着せ、金の鎖を首にかけて、王国を治める者のうち第三の位を与えよう。」17ダニエルは王に答えた。「贈り物など不要でございます。報酬はだれか他の者にお与えください。しかし、王様のためにその文字を読み、解釈をいたしましょう。23天の主に逆らって、その神殿の祭具を持ち出させ、あなた御自身も、貴族も、後宮の女たちも皆、それで飲みながら、金や銀、青銅、鉄、木や石で造った神々、見ることも聞くこともできず、何も知らないその神々を、ほめたたえておられます。だが、あなたの命と行動の一切を手中に握っておられる神を畏れ敬おうとはなさらない。 24そのために神は、あの手を遣わして文字を書かせたのです。 25さて、書かれた文字はこうです。メネ、メネ、テケル、そして、パルシン。 26意味はこうです。メネは数えるということで、すなわち、神はあなたの治世を数えて、それを終わらせられたのです。 27テケルは量を計ることで、すなわち、あなたは秤にかけられ、不足と見られました。 28パルシンは分けるということで、すなわち、あなたの王国は二分されて、メディアとペルシアに与えられるのです。」 🌸 答唱詩編 詩編148 典20 ①② いのちあるすベてのものは、神をたたえよ。 天は神をたたえよ。天にあるすベてのものは神をたたえよ。神の使いは神をたたえよ。すべてのカは神をたたえよ。 太陽と月は神をたたえよ。きらめく星座は神をたたえよ。大空は神をたたえよ。雲は神をたたえよ。 アレルヤ唱 典274 ⑦ アレルヤ、アレルヤ。死に至るまで忠実でありなさい。わたしはあなたに命の冠を与えよう。アレルヤ、アレルヤ。 🌸 福音朗読 (ルカ21.12-19) ルカによる福音  12〔そのとき、イエスは弟子たちに言われた。〕人々はあなたがたに手を下して迫害し、会堂や牢に引き渡し、わたしの名のために王や総督の前に引っ張って行く。 13それはあなたがたにとって証しをする機会となる。 14だから、前もって弁明の準備をするまいと、心に決めなさい。 15どんな反対者でも、対抗も反論もできないような言葉と知恵を、わたしがあなたがたに授けるからである。 16あなたがたは親、兄弟、親族、友人にまで裏切られる。中には殺される者もいる。 17また、わたしの名のために、あなたがたはすべての人に憎まれる。 18しかし、あなたがたの髪の毛の一本も決してなくならない。 19忍耐によって、あなたがたは命をかち取りなさい。」 🌸 分かち合い  迫害はキリスト教の歴史の中で、繰り返し起きてきた。初期のキリスト者がユダヤ人から受けた迫害。ローマ帝国の中で、何度も起きた厳しい迫害。近世ヨーロッパでは、キリスト教同士で行った迫害。日本やアジアで現地の人々から受けた迫害、新大陸で宣教師たちが受けた迫害。20世紀になってからも様々な形でキリスト教に浴びせられた迫害・弾圧。キリスト教の発展と迫害は切り離すことができないかのよう。 今日のルカの箇所は、終末の出来事の一つとして迫害が考えられているが、マタイ・マルコでは、イエスに従う弟子の生き方には、必ずついてくるものとして捉えられている。福音の終わりではなく、早い段階で、弟子への戒めの言葉の中に含まれているのはそのためだろう。 一つ注目したいのは、迫害にあったときに、どう答えるかという点。イエスは言う、「前もって弁明の準備をするまいと、心に決めなさい。どんな反対者でも対抗も反論もできないような言葉と知恵を授ける」と。マタイ・マルコでは、「心配するな。言うべきことは教えられる。語るのは、聖霊、父の霊である」と。つまり、迫害の苦しみの中で、キリストを信じる者の努力以上に、神が大いなるみわざを行われる、神自らが、ご自分を証しなさるということである。(S.T.)

年間第三十四火曜日(11/25)

祈る花:Inoruhana

天の神は一つの国を興されます 集会祈願 🌸 第一朗読 (ダニエル2.31-45) ダニエルの預言   31〔そのとき、ダニエルはネブガドネツアル王に言った。〕王様、あなたは一つの像を御覧になりました。それは巨大で、異常に輝き、あなたの前に立ち、見るも恐ろしいものでした。 32それは頭が純金、胸と腕が銀、腹と腿が青銅、 33すねが鉄、足は一部が鉄、一部が陶土でできていました。 34見ておられると、一つの石が人手によらずに切り出され、その像の鉄と陶土の足を打ち砕きました。 35鉄も陶土も、青銅も銀も金も共に砕け、夏の打穀場のもみ殻のようになり、風に吹き払われ、跡形もなくなりました。その像を打った石は大きな山となり、全地に広がったのです。 36これが王様の御覧になった夢です。さて、その解釈をいたしましょう。 37王様、あなたはすべての王の王です。天の神はあなたに、国と権威と威力と威光を授け、 38人間も野の獣も空の鳥も、どこに住んでいようとみなあなたの手にゆだね、このすべてを治めさせられました。すなわち、あなたがその金の頭なのです。 39あなたのあとに他の国が興りますが、これはあなたに劣るもの。その次に興る第三の国は青銅で、全地を支配します。 40第四の国は鉄のように強い。鉄はすべてを打ち砕きますが、あらゆるものを破壊する鉄のように、この国は破壊を重ねます。 41足と足指は一部が陶工の用いる陶土、一部が鉄であるのを御覧になりましたが、そのようにこの国は分裂しています。鉄が柔らかい陶土と混じっているのを御覧になったように、この国には鉄の強さもあります。 42足指は一部が鉄、一部が陶土です。すなわち、この国には強い部分もあれば、もろい部分もあるのです。 43また、鉄が柔らかい陶土と混じり合っているのを御覧になったように、人々は婚姻によって混じり合います。しかし、鉄が陶土と溶け合うことがないように、ひとつになることはありません。 44この王たちの時代に、天の神は一つの国を興されます。この国は永遠に滅びることなく、その主権は他の民の手に渡ることなく、すべての国を打ち滅ぼし、永遠に続きます。 45山から人手によらず切り出された石が、鉄、青銅、陶土、銀、金を打つのを御覧になりましたが、それによって、偉大な神は引き続き起こることを王様にお知らせになったのです。この夢は確かであり、解釈もまちがいございません。」 🌸 答唱詩編 ダニエル補遺・アザルヤ 典49 ③④ 神の名はあまねく世界に輝き、その栄光は天にそびえる。 ケルビムの上に座し、すべての深みを見通されるあなたに賛美。あなたは代々にたたえられ、あがめられる。大空の中であなたに賛美。あなたは代々にたたえられ、あがめられる。 造られたものはみな神を賛美し、代々に神をほめたたえよ。栄光は父と子と聖霊に。初めのように今もいつも世々に。アーメン。 アレルヤ唱 典274 ⑦ アレルヤ、アレルヤ。死に至るまで忠実でありなさい。わたしはあなたに命の冠を与えよう。アレルヤ、アレルヤ。 🌸 福音朗読 (ルカ21.5-11) ルカによる福音  5ある人たちが、神殿が見事な石と奉納物で飾られていることを話していると、イエスは言われた。 6「あなたがたはこれらの物に見とれているが、一つの石も崩されずに他の石の上に残ることのない日が来る。」 7そこで、彼らはイエスに尋ねた。「先生、では、そのことはいつ起こるのですか。また、そのことが起こるときには、どんな徴があるのですか。」 8イエスは言われた。「惑わされないように気をつけなさい。わたしの名を名乗る者が大勢現れ、『わたしがそれだ』とか、『時が近づいた』とか言うが、ついて行ってはならない。 9戦争とか暴動のことを聞いても、おびえてはならない。こういうことがまず起こるに決まっているが、世の終わりはすぐには来ないからである。」 10そして更に、言われた。「民は民に、国は国に敵対して立ち上がる。 11そして、大きな地震があり、方々に飢饉や疫病が起こり、恐ろしい現象や著しい徴が天に現れる。 🌸 分かち合い  エルサレムの神殿に詣でた人は、その建物の壮麗さに圧倒されたに違いない。ローマの聖ペトロ大聖堂や、パリのノートルダム聖堂の前に立っても、人は大きな感動を禁じ得ない。その前で、こうした建物が崩壊する日が来る、と言われたら、だれも俄かには信じられないだろう。10年前、高層ビルに囲まれた東京の中心で、東日本大地震を経験した時、50年近くも前に書かれた「日本沈没」という小説のことがとっさに頭に浮かんだ。 イエスは、実際に、その40年後に起きる神殿崩壊のことを予見しておられたのだろうか。しかし、イエスは、その出来事だけでなく、その先、だれも予告することが出来ない将来、必ず訪れる世の終わりのことを考えておられた。そして、それに先立って起きる、様々なしるしにも言及された。「戦争、暴動、地震、飢饉、疫病、恐ろしい現象や天に現れる著しいしるし」など。 イエスが生きられた時代から2000年以上が経った現在、人類にとって、戦争、暴動、地震、飢饉、疫病、これらは、決して、昔の話ではなく、人類が、今まさに、直面している地球規模の問題、安直な解決のない課題として、重くのしかかっている。しかし、その一つ一つが、すぐにも訪れる世の終わりでないことも、心に留めなければならない。求められるのは、この時期、いつ訪れるかしれない、その時、主が再びお出でになる時に向かって、どれだけ、ふさわしい心をもって、備えることができるか、ということではないか。(S.T.)

年間第三十四月曜日(11/24)

祈る花:Inoruhana

この人は、乏しい中から持っている生活費を全部入れた ベトナムの殉教者 🌸 第一朗読 (ダニエル1.1-6、8-20) ダニエルの預言  1ユダの王ヨヤキムが即位して三年目のことであった。バビロンの王ネブカドネツァルが攻めて来て、エルサレムを包囲した。  2主は、ユダの王ヨヤキムと、エルサレム神殿の祭具の一部を彼の手中に落とされた。ネブカドネツァルはそれらをシンアルに引いて行き、祭具類は自分の神々の宝物倉に納めた。 3さて、ネブカドネツァル王は侍従長アシュペナズに命じて、イスラエル人の王族と貴族の中から、 4体に難点がなく、容姿が美しく、何事にも才能と知恵があり、知識と理解力に富み、宮廷に仕える能力のある少年を何人か連れて来させ、カルデア人の言葉と文書を学ばせた。 5王は、宮廷の肉類と酒を毎日彼らに与えるように定め、三年間養成してから自分に仕えさせることにした。 6この少年たちの中に、ユダ族出身のダニエル、ハナンヤ、ミシャエル、アザルヤの四人がいた。 8ダニエルは宮廷の肉類と酒で自分を汚すまいと決心し、自分を汚すようなことはさせないでほしいと侍従長に願い出た。 9神の御計らいによって、侍従長はダニエルに好意を示し、親切にした。 10侍従長はダニエルに言った。 「わたしは王様が恐ろしい。王様御自身がお前たちの食べ物と飲み物をお定めになったのだから。同じ年ごろの少年に比べてお前たちの顔色が悪くなったら、お前たちのためにわたしの首が危うくなるではないか。」 11ダニエルは、侍従長が自分たち四人の世話係に定めた人に言った。 12「どうかわたしたちを十日間試してください。その間、食べる物は野菜だけ、飲む物は水だけにさせてください。 13その後、わたしたちの顔色と、宮廷の肉類をいただいた少年の顔色をよくお比べになり、その上でお考えどおりにしてください。」 14世話係はこの願いを聞き入れ、十日間彼らを試した。 15十日たってみると、彼らの顔色と健康は宮廷の食べ物を受けているどの少年よりも良かった。 16それ以来、世話係は彼らに支給される肉類と酒を除いて、野菜だけ与えることにした。 17この四人の少年は、知識と才能を神から恵まれ、文書や知恵についてもすべて優れていて、特にダニエルはどのような幻も夢も解くことができた。 18ネブカドネツァル王の定めた年数がたつと、侍従長は少年たちを王の前に連れて行った。 19王は彼らと語り合ったが、このダニエル、ハナンヤ、ミシャエル、アザルヤと並ぶ者はほかにだれもいなかったので、この四人は王のそばに仕えることになった。 20王は知恵と理解力を要する事柄があれば彼らに意見を求めたが、彼らは常に国中のどの占い師、祈禱師よりも十倍も優れていた。 🌸 答唱詩編 ダニエル補遺・アザルヤ 典49 ①② 神の名はあまねく世界に輝き、その栄光は天にそびえる。 わたしたちの先祖の神である主よ、あなたに賛美。あなたは代々にたたえられ、あがめられる。あなたの栄光の聖なる名に賛美。その名は代々にたたえられ、あがめられる。 あなたの栄光、聖なる神殿の中であなたに賛美。すべてにまさりあなたは代々にたたえられ、あがめられる。玉座におられるあなたに賛美。すべてにまさりあなたは代々にたたえられ、あがめられる。 アレルヤ唱 典274 ① アレルヤ、アレルヤ。目覚めて注意していなさい。人の子は思いがけない時に来る。アレルヤ、アレルヤ。 🌸 福音朗読 (ルカ21.1-4) ルカによる福音 1〔そのとき、〕イエスは目を上げて、金持ちたちが賽銭箱に献金を入れるのを見ておられた。 2そして、ある貧しいやもめがレプトン銅貨二枚を入れるのを見て、 3言われた。「確かに言っておくが、この貧しいやもめは、だれよりもたくさん入れた。 4あの金持ちたちは皆、有り余る中から献金したが、この人は、乏しい中から持っている生活費を全部入れたからである。」 🌸 分かち合い  この物語は、信仰と謙遜は主イエスの御心に至る最も確実な道であることを示しています。主イエスは、御自身の命の中心にあるものを私たちの内にも見たいと切望しておられます。それは、惜しみなく与える心と、必要な糧を与えてくださる神への信頼です。これらがあったからこそ、主イエスは私たちのために十字架にかかることができたのです。 これが主イエスと相通じるということです。御父に信頼し、できることはどんなことでも御父と人々のために自分自身を差し出すことです。献金や時間や愛を与える機会があれば出し惜しみをしないことです。私たちが過去に与えていたよりも少しでも多く与えたいと決めたら、神は備えてくださると信じることです。そうすれば、信頼と信仰の内に主イエスに託した心の「貯金」を主イエスに示していることになるのです。 ですから、今日、この貧しいやもめのような心、そして主イエス御自身のような心を与えていただくよう神に願いましょう。信仰と信頼の内に神に差し出すものは何でも、二枚の小銭でさえ、神は天の宝へと変えることがおできになると信じてください。 「主イエス様、この貧しいやもめの内にご覧になったものを私の内に認めてくださいますように」。 (『毎日の黙想』〔“The Word Among Us”〕、聖母の騎士社、2020年11月号、23日)

王であるキリスト 祭日(11/23)

祈る花:Inoruhana

すべてのものは御子によって支えられています サムエル記 1〔その日、〕イスラエルの全部族はヘブロンのダビデのもとに来てこう言った。「御覧ください。わたしたちはあなたの骨肉です。 2これまで、サウルがわたしたちの王であったときにも、イスラエルの進退の指揮をとっておられたのはあなたでした。主はあなたに仰せになりました。『わが民イスラエルを牧するのはあなただ。あなたがイスラエルの指導者となる』と。」 3イスラエルの長老たちは全員、ヘブロンの王のもとに来た。ダビデ王はヘブロンで主の御前に彼らと契約を結んだ。長老たちはダビデに油を注ぎ、イスラエルの王とした。 わたしたちは神の民、そのまきばの群れ。 「神の家に行こう」と言われて、わたしの心は喜びにはずんだ。エルサレムよ、わたしたちは今、おまえの門のうちに立っている。 しげく連なる町、エルサレム、すべての民の都。そこにはイスラエルの部族、神の民がのぼって来る。 イスラエルのおきてに従い、神に感謝をささげるために。そこにはさばきの座、ダビドの家の座がすえられている。 使徒パウロのコロサイの教会への手紙  12〔皆さん、わたしたちは、〕光の中にある聖なる者たちの相続分に、あなたがたがあずかれるようにしてくださった御父に感謝するように。 13御父は、わたしたちを闇の力から救い出して、その愛する御子の支配下に移してくださいました。 14わたしたちは、この御子によって、贖い、すなわち罪の赦しを得ているのです。 15御子は、見えない神の姿であり、すべてのものが造られる前に生まれた方です。 16天にあるものも地にあるものも、見えるものも見えないものも、王座も主権も、支配も権威も、万物は御子において造られたからです。つまり、万物は御子によって、御子のために造られました。 17御子はすべてのものよりも先におられ、すべてのものは御子によって支えられています。 18また、御子はその体である教会の頭です。御子は初めの者、死者の中から最初に生まれた方です。こうして、すべてのことにおいて第一の者となられたのです。 19神は、御心のままに、満ちあふれるものを余すところなく御子の内に宿らせ、 20その十字架の血によって平和を打ち立て、地にあるものであれ、天にあるものであれ、万物をただ御子によって、御自分と和解させられました。 アレルヤ唱 典266 王であるキリスト アレルヤ、アレルヤ。主の名によって来られるかたに賛美。わたしたちの父、ダビドの国に祝福がありますように。アレルヤ、アレルヤ。 ルカによる福音 35〔そのとき、議員たちはイエスを〕あざ笑って言った。「他人を救ったのだ。もし神からのメシアで、選ばれた者なら、自分を救うがよい。」 36兵士たちもイエスに近寄り、酸いぶどう酒を突きつけながら侮辱して、 37言った。「お前がユダヤ人の王なら、自分を救ってみろ。」 38イエスの頭の上には、「これはユダヤ人の王」と書いた札も掲げてあった。 39十字架にかけられていた犯罪人の一人が、イエスをののしった。「お前はメシアではないか。自分自身と我々を救ってみろ。」 40すると、もう一人の方がたしなめた。「お前は神をも恐れないのか、同じ刑罰を受けているのに。 41我々は、自分のやったことの報いを受けているのだから、当然だ。しかし、この方は何も悪いことをしていない。」 42そして、「イエスよ、あなたの御国においでになるときには、わたしを思い出してください」と言った。 43するとイエスは、「はっきり言っておくが、あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる」と言われた。  今日は、年間の最後の主日、王であるキリストの祭日です。この1年の間にいただいた様々な恵みに感謝するとともに、来週から始まる新しい典礼年に向けて、わたしたちが主と仰ぐ王であるキリストは、どのような方であるか、どのような王に従ってゆこうとしているかを、一人一人自分なりに考えてみるときだと言えます。 第一の朗読(サムエル記下)では、ダビデがヘブロンでイスラエルの王になったことが読まれました。ダビデは、ヘブロンで7年、エルサレムで33年、イスラエルを治めたと聖書は記しています。ダビデは、イスラエルを強い国に発展させながら、神への忠実を守り、理想の王として、尊敬されていますが、彼の後を継いだソロモン以下歴代の王の大半は、神への信仰から離れ、異教の風習に染まり、社会にも、様々な悪弊が広まりました。イスラエルの歴史を書いた記者は、イスラエルの悲惨な歴史は、民を導くべき王たちの不徳によると、厳しく断罪しています。 時代が進んで、イスラエルの地に、「ユダヤ人の王」と噂されるイエスが登場し、神の言葉を語った時、多くの人々はそれに聞き入ったが、怪しむ者もいました。当時のイスラエルの指導者である祭司、律法学者、長老たちは自分たちの権威を脅かすイエスを放置できず、裁きの座に引き出し、総督ピラトの手により十字架刑に処しました。 今日の福音(ルカ)の中で、十字架に付けられたイエスに対し、衆議会の議員も、ローマ軍の兵士も、同じ十字架に付けられた犯罪人の一人も、皆、似たような言葉を吐きます。「もし、お前が神からのメシアなら、選ばれた者なら」、「ユダヤ人の王なら」、「自分を救ってみろ」と。 「自分を救う」、それは、きれいな言葉、自立した人間の考えに聞こえます。しかし、自分の知恵、力、経験、そうした自分のもてるもので何事も解決できる、という考えには、すべての人間が陥る一つの誘惑、大きな落とし穴があります。自分の問題、自分の家族、自分の仕事、自分の国が抱える問題、それは、すべて、人間が自分の力で解決できる、と考えがちです。しかし、自分を根本において生かし、支え、導く神への信頼、神への開きがなければ、人間の努力はどこかで挫折するものです。 イエスとともに十字架につけられたもう一人の犯罪人は、そのことを悟っていたのでしょうか。自分のあやまちを認め、イエスに懇願します、「あなたの御国においでになるとき、わたしを思い出してください」。「はっきり言っておくが、あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる」。イエスは、人を救いに導くだけでなく、自ら、主である神にすべてを委ねる僕として、生涯を全うされました。それこそが、神が求めておられた、まことの「イスラエルの王」の姿なのです。 現代の教会にとって、牧者として、イエスの姿をもっとも明白な形で示される教皇フランシスコは、わたしたちに何を語っておられるでしょうか。すでに語られた多くの言葉、そして、その振舞いから、教皇が、それまでとは違う、僕としての姿を全世界に示しておられることは疑うことができません。貧しさに徹し、人々の苦しみに心を開き、少しでもそれに寄り添い、支えようと、イエスが生きられた「王の道」を、教皇自ら生き抜いておられます。このことを感謝の内に心に留め、少しでも、それに倣う恵みを、一人一人のため、日本の教会全体のために、共にお祈りいたしましょう。(S.T.)

年間第三十三土曜日(11/22)

祈る花:Inoruhana

すべての人は、神によって生きている (聖チェチリアおとめ殉教者) マカバイ記  1アンティオコス王は、高地の国々を通過していたとき、豊富な金と銀で有名なエリマイスという町がペルシアにあることを耳にした。 2その町の神殿は、驚くほど富んでいて、金の兜、胸当て、武器などがあったが、それはマケドニア人の王、フィリポスの子アレキサンドロスが残していったものである。このアレキサンドロスはギリシア人を統治した最初の人物である。 3アンティオコスはその町の占領と略奪をもくろんで出陣したが、たくらみが事前に市民に漏れてしまったので、成功しなかった。 4人々が彼に戦いを挑もうと立ち上がったからである。彼は恐れをなし、心を残しつつも、途中からくびすを返しバビロンへ戻ろうとした。 5すると、ペルシアにいる彼のところに一人の男がやって来て、報告をもたらした。「ユダの地への派遣軍は敗走しました。 6リシアスは最強の軍隊を率いて進軍しましたが、撃退されてしまいました。ユダヤ軍は、撃破した部隊から奪い取った多数の武器、装備、戦利品で軍を強化し、 7王がエルサレムの祭壇にお建てになった『憎むべきもの』を引きずり下ろし、聖所を以前のように高い塀で囲み、王の町であったベトツルも同様に固めました。」 8この言葉を聞いて、王は愕然として激しく震えだし、寝台に倒れ、心痛のあまり病気になってしまった。事が思うようにならなかったからである。 9激痛が繰り返し襲ったので、彼は何日もそこにとどまることを余儀なくされた。彼は死が迫っていることを悟った。 10彼は友人全員を呼び寄せて言った。「眠りはわたしの目を離れ、心労のため精も根も尽き果てた。 11わたしは自問した。『なぜこんなにひどい苦痛に遭わされ、大波にもまれなければならないのか。権力の座にあったときには、憐れみ深く、人々には愛されていたのに』と。 12しかし今、エルサレムで犯した数々の悪行が思い出される。わたしは不当にも、その町の金銀の調度品全部をかすめ、ユダの住民を一掃するため兵を送った。 13わたしには分かった。こうした不幸がわたしにふりかかったのは、このためなのだ。見よ、わたしは大きな苦痛を負って、異郷にあって死ぬばかりである。」 主をたたえよう。主はいつくしみ深く、そのあわれみは永遠。 すべての人よ、神に向かって喜びの声をあげよ。神の栄えをほめうたい、その栄光を賛美せよ。「すべての人はあなたを伏し拝み、み名をたたえて喜びうたう。」 神は力を現してとこしえに治め、諸国に目を注ぎ、逆らう者を高ぶらせない。すべての民よ、わたしたちの神をたたえ、賛美の歌を響かせよ。 アレルヤ唱 典269 ㉙ アレルヤ、アレルヤ。わたしたちの救い主イエス・キリストは死を滅ぼし、福音によって生涯を照らしてくださった。アレルヤ、アレルヤ。 ルカによる福音  27〔そのとき、〕復活があることを否定するサドカイ派の人々が何人か近寄って来て、イエスに尋ねた。 28「先生、モーセはわたしたちのために書いています。『ある人の兄が妻をめとり、子がなくて死んだ場合、その弟は兄嫁と結婚して、兄の跡継ぎをもうけねばならない』と。 29ところで、七人の兄弟がいました。長男が妻を迎えましたが、子がないまま死にました。 30次男、 31三男と次々にこの女を妻にしましたが、七人とも同じように子供を残さないで死にました。 32最後にその女も死にました。 33すると復活の時、その女はだれの妻になるのでしょうか。七人ともその女を妻にしたのです。」 34イエスは言われた。「この世の子らはめとったり嫁いだりするが、 35次の世に入って死者の中から復活するのにふさわしいとされた人々は、めとることも嫁ぐこともない。 36この人たちは、もはや死ぬことがない。天使に等しい者であり、復活にあずかる者として、神の子だからである。 37死者が復活することは、モーセも『柴』の個所で、主をアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神と呼んで、示している。 38神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神なのだ。すべての人は、神によって生きているからである。」 39そこで、律法学者の中には、「先生、立派なお答えです」と言う者もいた。 40彼らは、もはや何もあえて尋ねようとはしなかった。  神殿に入られたイエスがユダヤ人との間でされた論争は、いくつもあるが、今週はその一つだけが選ばれている。待降節を前にした時期として、スペースの問題から絞られたのかもしれない。 今日の論争のテーマは復活。サドカイ派の人々は復活ない、と主張していた。彼らの信仰の土台は、モーセ5書(律法)に限られ、後の時代に編まれた文書:預言者、知恵文学等は同等の権威をもたない、とされた。旧約で復活に言及するのは、イザヤ、ダニエル預言書、さらには、続編に属するマカバイ記等。しかし、イエスが約束される復活には遠く及ばない。 サドカイ派の人々が持ち出す理屈は、人が死んで子を残さなかった場合、その妻は、子孫を残す(家名を残す)ために、その弟と結婚すべし、という律法(申命記25レヴィラート婚)の規定。こうした掟は、聖書以外にも残されている。 しかし、イエスは言う、「復活するのにふさわしいとされた人々は、娶ることも嫁ぐこともない」と。死ぬことがなければ、子孫を残す必要もない。イエスが約束される復活のいのちは、まさに、神のいのちであり、わたしたちいのちの理解を遥かにこえるものであること、謙虚に認めなければならない。だから、イエスは言う、「神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神なのだ。すべての人は、神によって生きているからだ」と。(S.T.)

年間第三十三金曜日(11/21)

祈る花:Inoruhana

わたしの家は、祈りの家でなければならない。 聖母マリアの奉献 記念日 マカバイ記  36〔その日、〕ユダと兄弟たちは言った。「見よ、我らの敵は粉砕された。都に上り、聖所を清め、これを新たに奉献しよう。」 37そこで全軍が集結し、シオンの山を目指して上って行った。  52第百四十八年の第九の月――キスレウの月――の二十五日に、彼らは朝早く起き、 53焼き尽くす献げ物のための新しい祭壇の上に律法に従っていけにえを供えた。 54異教徒が祭壇を汚したのと同じ日、同じ時に、歌と琴、竪琴とシンバルに合わせて、その日に祭壇を新たに奉献した。 55民は皆、地に顔を伏せて拝み、彼らを正しく導いてくださった方を天に向かってたたえた。 56こうして祭壇の奉献を八日にわたって祝い、喜びをもって焼き尽くす献げ物をささげ、和解の献げ物と感謝の献げ物のいけにえを屠った。 57彼らはまた神殿の正面を黄金の冠と小盾で飾り、門と祭司部屋を再建し、戸を取り付けた。 58民の間には大きな喜びがあふれた。こうして異邦人から受けた恥辱は取り除かれたのである。59ユダとその兄弟たち、およびイスラエルの全会衆はこの祭壇奉献の日を、以後毎年同じ時期、キスレウの月の二十五日から八日間、喜びと楽しみをもって祝うことにした。 栄光は世界に及び、すべてを越えて神は偉大。 神をたたえ、賛美の歌をうたおう。神をたたえることは美しく正しい。神はエルサレムを建て直し、その散らされた者を集められる。 神は失意の人々を支え、その傷をいやされる。へりくだる人を支え、逆らう者を地に倒される。 アレルヤ唱 典272 ㉖ アレルヤ、アレルヤ。羊はわたしの声を聞き分け、わたしもその羊を知り、羊はわたしに従う。アレルヤ、アレルヤ。 ルカによる福音  45〔そのとき、〕イエスは神殿の境内に入り、そこで商売をしていた人々を追い出し始めて、 46彼らに言われた。「こう書いてある。『わたしの家は、祈りの家でなければならない。』ところが、あなたたちはそれを強盗の巣にした。」47毎日、イエスは境内で教えておられた。祭司長、律法学者、民の指導者たちは、イエスを殺そうと謀ったが、 48どうすることもできなかった。民衆が皆、夢中になってイエスの話に聞き入っていたからである。  かつて、聖地で聖書の勉強をしていた頃、クリスマス前にエルサレムの市街を歩いていると、馬小屋のような飾りをつけている家が並んでいることに気づき、一瞬、ユダヤ人もクリスマスをお祝いするのだと思ったが、実は、ハヌカー(神殿奉献祭)の準備だとわかった。 今日の第一朗読で読まれたように、イエスの誕生160年ほど前、イスラエルの地は、シリアの支配下におかれ、神殿にはギリシャの神々の像が林立していた。マカバイ記に記されているように、イエスラエルは厳しい迫害の末、神殿を異教の汚れから浄め、先祖から守ってきた唯一の神を礼拝する家として再興することに成功し、その記念として、クリスマスに近い時期に、ハヌカーの祭りとして祝っていた。 イエスは、あたかも、このマカバイ一族の、真の神への熱情を再現するかのように、神殿に入るや、犠牲に供する動物を売り買いする人々を、荒々しく追放された。マカバイ時代のような異教からの浄めではなく、真心の伴わない形式的な礼拝に終止符を打つため、そして、人の手で造られた神殿に代わる、イエス自身の体という新しい神殿を打ち立てるため、まずご自身のすべてを父なる神にささげようとなさった。イエスは預言者イザヤの言葉を引用して、「わたしの家は、祈りの家でなければならない」、さらには、預言者エレミヤの言葉を借りて「あなたたちはそれを強盗の巣にした」と厳しく戒められた。果たして、わたしたちにとっての教会は、祈りをするにふさわしい場と言えるだろうか、聖霊の神殿と言われるわたしたち自身、それにふさわしい生き方をしているだろうか。振り返る恵みを祈ろう。(S.T.)

年間第三十三木曜日(11/20)

祈る花:Inoruhana

もしこの日に、お前も平和への道をわきまえていたなら…… マカバイ記  15〔その日、〕背教を強いる王の役人たちが、異教のいけにえを献げさせるためにモデインの町にやって来た。 16多くのイスラエル人が彼らを迎えに出、マタティアとその息子たちも集められた。 17そこで王の役人たちは、マタティアに言った。「あなたはこの町では有力な指導者であり、御子息や御兄弟の信望もあつい。 18率先して王の命令を果たしてもらいたい。これはすべての民族が実行しているもので、ユダの人々も、エルサレムに残留している者たちも行っているのだ。そうすれば、あなたや御子息たちは王の友人と認められ、金銀、その他多くの報奨を受ける栄誉にあずかるであろう。」 19マタティアは大声でこれに答えて言った。「たとえ王の領土内に住む全民族が王に従い、各自その先祖の宗教を捨てて王の命令に服したとしても、 20このわたしと息子たち、同胞たちはわたしたちの先祖の契約を守って歩みます。 21律法と掟を捨てるなど、論外です。 22わたしたちの宗教を離れて右や左に行けという王の命令に、従うつもりはありません。」 23マタティアが語り終えたとき、一人のユダヤ人が一同の前に進み出て、王の命令に従いモデインの異教の祭壇にいけにえを献げようとした。 24これを見たマタティアは律法への情熱にかられて立腹し、義憤を覚え、駆け寄りざまその祭壇の前でこの男を切り殺した。 25またその時、いけにえを強要しに来ていた王の役人の一人をも殺し、この祭壇を引き倒した。 26それは、あのサルの子ジムリに対してピネハスがしたような、律法への情熱から出た行為であった。 27マタティアは町の中で大声をあげて言った。「律法に情熱を燃やす者、契約を固く守る者はわたしに続け。」 28こうしてマタティアと息子たちは、家財一切を町に残したまま、山に逃れた。29–30一方、これと時を同じくして、義と公正を求める多くの者が、妻子や家畜を伴って、荒れ野に下り、そこに住んだ。災いが迫って来たからである。 わたしたちは神の民、そのまきばの群れ。 「わたしの民を集めよ、いけにえをささげて契約を結ぶ民を。」天は神の正義を告げる。神はすべてをさばかれる。 苦悩の日にわたしを呼び求めよ。わたしはおまえを救い、おまえはわたしをたたえる。感謝をささげる人は神をあがめる。正しい道を歩む人を、神は確かに救われる。 アレルヤ唱 典261 ③ アレルヤ、アレルヤ。神に心を閉じてはならない。今日こそ神のことばを聞こう。アレルヤ、アレルヤ。 ルカによる福音  41エルサレムに近づき、都が見えたとき、イエスはその都のために泣いて、 42言われた。「もしこの日に、お前も平和への道をわきまえていたなら……。しかし今は、それがお前には見えない。 43やがて時が来て、敵が周りに堡塁を築き、お前を取り巻いて四方から攻め寄せ、 44お前とそこにいるお前の子らを地にたたきつけ、お前の中の石を残らず崩してしまうだろう。それは、神の訪れてくださる時をわきまえなかったからである。」  エルサレム旧市街の東に位置する神殿跡には、現在、金色に輝くドームをもつイスラム教のモスクが立っている。その東、オリーブ山の中腹には、小さな祠のような教会(Dominus flevit)が立っていて、まさに、今日のルカ福音が記している、「都が見えたとき、イエスはその都のために泣いた」場所とされる。 今日の箇所の少し前では、イエスが、エルサレムの手前にある村で人々から大歓迎を受けたことを記している。その時も、ファリサイ派の人々は、イエスに、「お弟子たちを叱ってください」と言うと、イエスは、「もしこの人たちが黙れば、石が叫び出す」と答えられたことをルカは記している。 イエスを歓迎する人と、イエスに難癖をつける人。イエスの言葉、病める人や貧しい人に近づき、癒しの恵みを注ぐイエスに感動する庶民と、自分たちこそが神を知り、神の道を説くと自認し、イエスの言動をことごとく批判し亡き者にしようとする指導者層。 人間の世界には、いつもこうした二つのグループが存在するのだろうか。イエスは、神の訪れを認めようとしない人々によって、彼らの信仰の中心であり、誇りであったエルサレム神殿が滅ぼされ、人民皆が苦しむことを涙のうちに受け入れられた。しかし、神は、かつて、捕囚のイスラエルに復興の恵みを与え、イエスを否んだペトロを赦された。いつの日か、パウロの言うように、イエスを受け入れなかった人々が、回心の恵みに与ることを心から信じる恵みを祈ろう。(S.T.)

年間第三十三水曜日(11/19)

祈る花:Inoruhana

良い僕だ。よくやった。 マカバイ記  1〔その日、〕七人の兄弟が母親と共に捕らえられ、鞭や皮ひもで暴行を受け、律法で禁じられている豚肉を口にするよう、王に強制された。  20それにしても、称賛されるべきはこの母親であり、記憶されるべき模範であった。わずか一日のうちに七人の息子が惨殺されるのを直視しながら、主に対する希望のゆえに、喜んでこれに耐えたのである。 21崇高な思いに満たされて、彼女は、息子たち一人一人に父祖たちの言葉で慰めを与え、女の心情を男の勇気で奮い立たせながら、彼らに言った。 22「わたしは、お前たちがどのようにしてわたしの胎に宿ったのか知らない。お前たちに霊と命を恵んだのでもなく、わたしがお前たち一人一人の肢体を組み合わせたのでもない。 23人の出生をつかさどり、あらゆるものに生命を与える世界の造り主は、憐れみをもって、霊と命を再びお前たちに与えてくださる。それは今ここで、お前たちが主の律法のためには、命をも惜しまないからだ。」 24アンティオコスは侮辱されたと感じ、その声に非難の響きを聞き取った。彼は、いちばん末の息子がまだ生きていたので、言葉で勧告するだけでなく、誓いをもって、「もし先祖の慣習を捨てるなら、富と最高の幸福を保障し、王の友人として遇し、仕事も与えよう」と約束した。 25だが、若者が全く耳を貸そうとしないので、王は母親を呼び寄せて、少年を救うために一役買うようにと勧めた。 26王があまりに強く勧めるので、母親は息子を説得することを承知した。 27しかし母親は、若者の上に身をかがめ、残酷な暴君をあざけってから、父祖たちの言葉で言った。「わが子よ、わたしを憐れんでおくれ。わたしはお前を九か月も胎に宿し、三年間乳を含ませ、養い、この年になるまで導き育ててきました。 28子よ、天と地に目を向け、そこにある万物を見て、神がこれらのものを既に在ったものから造られたのではないこと、そして人間も例外ではないということを知っておくれ。 29この死刑執行人を恐れてはなりません。兄たちに倣って、喜んで死を受け入れなさい。そうすれば、憐れみによってわたしは、お前を兄たちと共に、神様から戻していただけるでしょう。」 30彼女が語り終えるとすぐ、若者は王に言った。「何を待っているのだ。わたしは王の命令などに耳は貸さない。わたしが従うのは、モーセを通して我々の先祖に与えられた律法の命令である。 31しかし、ヘブライ人に対して悪辣非道を重ねてきたあなたは、神の御手を逃れることはできないのだ。 主は豊かなあがないに満ち、いつくしみ深い。 神よ、わたしの正しい訴えと叫びに心を留め、いつわりのない祈りに耳を傾けてください。正しいさばきをわたしに現し、分けへだてのない目を注いでください。 神よ、あなたに叫ぶわたしに答え、耳を傾けて、願いを聞いてください。あなたのもとに逃れる者を力強く救い、いつくしみのわざを現してください。 アレルヤ唱 典270 53 アレルヤ、アレルヤ。あなたがたを世から選んだのは、あなたがたは行って実を結び、その実が残るためである。アレルヤ、アレルヤ。 ルカによる福音  11〔そのとき、イエスは〕一つのたとえを話された。エルサレムに近づいておられ、それに、人々が神の国はすぐにも現れるものと思っていたからである。 12イエスは言われた。「ある立派な家柄の人が、王の位を受けて帰るために、遠い国へ旅立つことになった。 13そこで彼は、十人の僕を呼んで十ムナの金を渡し、『わたしが帰って来るまで、これで商売をしなさい』と言った。 14しかし、国民は彼を憎んでいたので、後から使者を送り、『我々はこの人を王にいただきたくない』と言わせた。 15さて、彼は王の位を受けて帰って来ると、金を渡しておいた僕を呼んで来させ、どれだけ利益を上げたかを知ろうとした。 16最初の者が進み出て、『御主人様、あなたの一ムナで十ムナもうけました』と言った。 17主人は言った。『良い僕だ。よくやった。お前はごく小さな事に忠実だったから、十の町の支配権を授けよう。』 18二番目の者が来て、『御主人様、あなたの一ムナで五ムナ稼ぎました』と言った。 19主人は、『お前は五つの町を治めよ』と言った。 20また、ほかの者が来て言った。『御主人様、これがあなたの一ムナです。布に包んでしまっておきました。 21あなたは預けないものも取り立て、蒔かないものも刈り取られる厳しい方なので、恐ろしかったのです。』 22主人は言った。『悪い僕だ。その言葉のゆえにお前を裁こう。わたしが預けなかったものも取り立て、蒔かなかったものも刈り取る厳しい人間だと知っていたのか。 23ではなぜ、わたしの金を銀行に預けなかったのか。そうしておけば、帰って来たとき、利息付きでそれを受け取れたのに。』 24そして、そばに立っていた人々に言った。『その一ムナをこの男から取り上げて、十ムナ持っている者に与えよ。』 25僕たちが、『御主人様、あの人は既に十ムナ持っています』と言うと、 26主人は言った。『言っておくが、だれでも持っている人は、更に与えられるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられる。 27ところで、わたしが王になるのを望まなかったあの敵どもを、ここに引き出して、わたしの目の前で打ち殺せ。』」 28イエスはこのように話してから、先に立って進み、エルサレムに上って行かれた。  エルサレムに入城される直前にイエスが語られたたとえ話。遠国に出かけるある立派な家柄の人が僕たちにそれぞれ1ムナを預ける。1ムナは100デナリと言うから、日本の円に換算すれば100万円相当だろうか。ある僕はそれで10ムナを儲け、他の僕は5ムナ儲ける。しかし、一人の僕は、主人が厳しい人だと思って、預かった1ムナを布に包んでしまっておいた。戻ってきた主人は、はじめの二人を大いにほめたが、3番目の僕には厳しく問い詰める。せめて、銀行に預けておけば、利息付きで受け取ることができたのに、と。そして、預けておいた1ムナを取り上げ、10ムナにした僕に与えたという話。 この話は、マタイにある「タラントンのたとえ」のように、つい、人間に与えられている様々な能力についての教えと思いがちだが、皆が一様に1ムナ与えられていることから考えると、むしろ、人間一人一人に例外なく、与えられているいのち、あるいは、イエスに従う弟子たちに与えられた信仰と言う値い高い賜物ととった方がよいかもしれない。このルカの話では、この主人は、王位を得るために旅に出たとされているが、それは、主イエスが復活された後、いつの日か、再びお出でになる(再臨)という信仰の中で、それまでの期間をどう生きるかという教会に生きるわたしたちに課せられた大きな課題がテーマのことだと説明される。わたしたち一人ひとり、自分に与えられた人生、さらには、信仰というものをどう生きるか、ひたすら安全第一で何もせずに過ごすのか、主の導きに信頼して、失敗を恐れず、与えられた機会を生かそうとしているか、あらためて真剣に自問しなければならないのではないか。(S.T.)

年間第三十三火曜日(11/18)

Inoruhana: Bông Hoa Cầu Nguyện

人の子は、失われたものを捜して救うために来た マカバイ記  18〔その日、〕律法学者として第一人者で、既に高齢に達しており、立派な容貌の持ち主であったエレアザルも、口をこじあけられ、豚肉を食べるように強制された。 19–20しかし彼は、不浄な物を口にして生き永らえるよりは、むしろ良き評判を重んじて死を受け入れることをよしとし、それを吐き出し、進んで責め道具に身を任そうとした。これこそ、生命への愛着があるとはいえ、口にしてはならないものは断固として退けねばならない人々の取るべき態度である。 21ところがそのとき、禁じられたいけにえの内臓を食べさせる係の者たちは、エレアザルと旧知の間柄であったので、ひそかに彼に席を外させて、王が命じたいけにえの肉を口にした振りをして、彼自身が用意し、持参している清い肉を食べることを勧めた。 22そうすれば、彼は死を免れ、その上、彼らとの昔からの友情のゆえに優遇されることになるからであった。 23これに対して、彼は筋の通った考えを持っていて、その年齢と老年のゆえの品位、更に新たに加わった立派な白髪、だれにもまさった幼いときからの生き方にふさわしく、とりわけ神が定められた聖なる律法に従って、毅然とした態度でちゅうちょすることなく、「わたしを陰府へ送り込んでくれ」と言った。 24「我々の年になって、うそをつくのはふさわしいことではない。そんなことをすれば、大勢の若者が、エレアザルは九十歳にもなって異教の風習に転向したのか、と思うだろう。 25その上彼らは、ほんのわずかの命を惜しんだわたしの欺きの行為によって、迷ってしまうだろう。またわたし自身、わが老年に泥を塗り、汚すことになる。 26たとえ今ここで、人間の責め苦を免れえたとしても、全能者の御手からは、生きていても、死んでも逃れることはできないのだ。 27だから今、男らしく生を断念し、年齢にふさわしい者であることを示し、 28若者たちに高貴な模範を残し、彼らも尊く聖なる律法のためには進んで高貴な死に方ができるようにしよう。」こう言い終わると、直ちに責め道具の方へ歩いて行った。 29今し方まで、彼に好意を寄せていた人々も、この語られた言葉のゆえに、反感を抱くようになった。彼らはエレアザルの気が違ったのだと思った。 30鞭の下で、まさに息絶えんとしたとき、彼はうめき声をあげて言った。「聖なる知識を持っておられる主は、すべてのことを見通しておられる。わたしは死を逃れることもできたが、鞭打たれ、耐え難い苦痛を肉体で味わっている。しかし、心では、主を畏れ、むしろそれを喜んで耐えているのだ。」 31彼はこのようにして世を去った。その死はただ単に若者ばかりか、少なからぬ同胞の心に高潔の模範、勇気の記念として残されたのである。 神はわたしを救われる。そのいつくしみをたたえよう。 神はわたしの砦、わたしの岩、わたしの救い、身を避ける岩、わたしの神、わたしの盾、わたしのやぐら、救いの力。 わたしを支える岩、わたしを救われる神に栄光と賛美。神よ、諸国の民の中であなたをたたえ、わたしはあなたの名を喜びうたう。 アレルヤ唱 典268 ㉕ アレルヤ、アレルヤ。わたしたちの罪のゆるしのために、ひとり子を遣わされた。アレルヤ、アレルヤ。 ルカによる福音  1〔そのとき、〕イエスはエリコに入り、町を通っておられた。 2そこにザアカイという人がいた。この人は徴税人の頭で、金持ちであった。 3イエスがどんな人か見ようとしたが、背が低かったので、群衆に遮られて見ることができなかった。 4それで、イエスを見るために、走って先回りし、いちじく桑の木に登った。そこを通り過ぎようとしておられたからである。 5イエスはその場所に来ると、上を見上げて言われた。「ザアカイ、急いで降りて来なさい。今日は、ぜひあなたの家に泊まりたい。」 6ザアカイは急いで降りて来て、喜んでイエスを迎えた。 7これを見た人たちは皆つぶやいた。「あの人は罪深い男のところに行って宿をとった。」 8しかし、ザアカイは立ち上がって、主に言った。「主よ、わたしは財産の半分を貧しい人々に施します。また、だれかから何かだまし取っていたら、それを四倍にして返します。」 9イエスは言われた。「今日、救いがこの家を訪れた。この人もアブラハムの子なのだから。 10人の子は、失われたものを捜して救うために来たのである。」  ザアカイという名の徴税人の話。メシアのうわさもあるイエスが通りかかることを耳にし、一目見ようとやってきますが、背が低かったため群衆にさえぎられて見ることができません。イエスは、すぐにザアカイに気づき声をかけ、彼の家の客人となり、一夜をともに過ごします。ユダヤ人にはとうてい考えられないことで、早速、非難の声が聞こえます。「あの人は罪深い男のところに行って、宿をとった」と。 ザアカイがどんな悪事を働いたかは記されていませんが、徴税人の頭ということで、人々からは人々の弱さにつけ込み、私腹を肥やす大悪党のように思われていたのでしょう。しかし、思いがけず、イエスから声をかけられ、自宅にまで迎え入れたザアカイは言います、「主よ、わたしは財産の半分を貧しい人々に施します。また、だれかから何かだまし取っていたら、それを四倍にして返します」と。イエスとの出会い、そして、思いもよらないイエスのいつくしみに満ちた声掛けに、ザアカイの凍りついた心は一気に溶かされます。そんな男にイエスは言われます、「今日、救いがこの家を訪れた」と。イエスとの出会いが、それまでの生き方と訣別し、新しい心で人生をやり直す一大決心を起こさせたのです。 イスラエルの人々が心の中に築いてきた壁を打ち崩し、異邦人、罪人、病人、貧者等、様々な形で差別を受けてきた社会的弱者を、限りない愛をもって迎え入れる父なる神の愛、イエスが生涯をかけて証しされたその愛に少しでも近づく恵みを祈りましょう。(S.T.)